「ホームページの情報をそのままパンフレットにできたらいいのに」そう思ったことはありませんか。コピーして紙に落とし込めば手っ取り早い、と感じるのは自然なことです。
けれども現実には、データの形式や媒体の特性、読まれるシーンの違いなどから、パンフレットにはパンフレットならではの工夫が欠かせません。
ホームページの正体は「コードの世界」
まず知っておきたいのは、ホームページの正体です。
私たちが日々見ているWebサイトは、HTMLやCSSといったコードによって構成されています。

画面に表示されている文字や画像は、ブラウザがコードを読み解いて配置しているものに過ぎません。
つまり、画面上で見えている情報がそのまま「パンフレット用のデータ」になるわけではないのです。
流用できるのは一部の写真やロゴ程度。ほとんどは印刷物として一からデザインを組み直す必要があります。
ここに「Webの情報があるから紙も簡単に作れる」という思い込みとのギャップがあるのです。
紙には紙のルールがある
次に考えなければならないのは、媒体の性質の違いです。
ホームページは、縦にスクロールすればいくらでも情報を追加できます。必要に応じてリンクをつけて、情報を分散して配置することも可能です。
一方でパンフレットは、数ページという限られた器の中で勝負します。さらに、Webと紙ではそもそも扱う単位やデータ形式が違うのです。
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解像度の違い:Webは「72dpi」で十分ですが、印刷物は「300dpi」が基本。Web用に軽量化した画像は、そのまま紙にすると粗くぼやけてしまいます。
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色の違い:Webは光の三原色「RGB」、印刷はインクの四原色「CMYK」。同じ色でも見え方が変わり、再調整が必要です。
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データ作成ツールの違い:WebはHTMLやCSS、IllustratorやFigmaで作るデザインデータも画面前提。一方パンフレットは、InDesignなど印刷用データを扱うツールで仕上げるのが基本。
つまり、見た目が似ていても「そのまま流用できない」構造上の違いが存在するのです。
そして何より、紙には閲覧シーンを意識した情報設計が欠かせません。
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展示会で配る場合:数秒で目を引くキャッチやビジュアルが重要。
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商談後に渡す場合:サービス内容や料金を整理し、比較検討に役立つ情報を中心に。
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店頭で手に取られる場合:一目で安心感が伝わるデザインやレイアウトが効果的。
同じ会社案内であっても、使われる場面によって最適な形は大きく変わります。
だからこそ、パンフレットには「紙という舞台」に合わせた独自の設計が不可欠なのです。
原稿や画像の精度、データ形式、色味やサイズ感まで含めて、場合によってはすべて調整し直す必要があります。
パンフレット制作の本質は「伝わる順番」の設計
パンフレット制作の価値は、単に情報を載せることではありません。
むしろ重要なのは、必要な情報をどういう順番で伝えるかを設計することです。
安心感 → サービスの魅力 → 行動喚起
といった流れを丁寧に組み立てることで、初めて読み手の心に届きます。
ここで効いてくるのが、制作会社がどれだけ事業やサービス、ターゲットを理解しているかです。
理解があれば――
「ここはWebで見てもらえば十分」
「ここは紙に必ず載せないと相手が困る」
といった判断をスムーズに下せます。
パンフレットの出来栄えを左右するのは、データの有無ではなく、この“理解に基づいた設計力”なのです。
まとめ:データよりも理解が武器になる
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ホームページのデータは、パンフレットにはそのまま使えない
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紙媒体には、閲覧シーンや伝え方を前提にした再構築が必要
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商売の流れやターゲットに沿った「伝わる順番」を設計できるのが制作会社の価値
「理解があるから伝わるものになる」――これがパンフレット制作の現実です。
次にパンフレットを検討される際は、ぜひ“データの有無”ではなく“どれだけ自分たちの事業を理解しているか”という視点で制作会社を選んでみてください。
きっと出来上がったパンフレットの「刺さり方」が変わってくるはずです。

